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カステロフ寮の仲間たちが無事大学を卒業し、各々が新社会人として寮を巣立ったその数日後……。

フィオナ一家が住んでいたピンクハウスに、ギンガの姿がありました。


訪問


実家にも帰らず、寮を出たその足でダニエラを訪ねてきたものの、ピンクハウスは閑散と静まり返って、人の気配がありませんでした。
そして、玄関ドアには破れかけた「売家」の張り紙が……。



鍵のかかっていたドアを無理やり壊して、中に入るギンガ。
しかし、部屋の中は家具も人の姿もない、がらんとした空間でした。


からっぽの家


ダニエラは?
フィオナは?
小さな妹のベロニカはどこに?

しんと静まり返った部屋は、何も答えてくれません。





部屋の中は、うっすらと埃が積もっています。
ここが空き家になってから、少なくとも数ヶ月の時間が経っているようでした。
大学から何度電話をかけても繋がらなかったはずです。
とうの昔に、一家はここを去っていたのでしょう。

各部屋を見て回りながら、ギンガはゆっくりと奥の部屋に足を踏み入れました。
そこは、以前はダニエラの部屋だったところです。


ダニエラの部屋


あのときの壁紙はそのままでも、部屋に愛しい人の姿はありませんでした。
呆然と、部屋に立ち尽くすギンガ。

なぜ?
どうして?
何も言わずに消えてしまったのか?

思い当たるといえば、あのことしかありません。
……そう。
ダニエラにプロポーズをした、あのとき。


沈黙のあと


お姉さま……。
俺のこと、そんなに迷惑だったんですか?
あのとき断っただけじゃなく、黙って俺の前から姿を消してしまうくらいに。

俺、お姉さまが好きです。
好きだから、お姉さまが嫌がることなんて絶対しない。
お姉さまが嫌なら、結婚も同棲もどうでもよかったのに。

それでも。
それでも俺の前から逃げてしまうくらい、お姉さまには迷惑だったんですか……?



ダウンタウンにて


ダウンタウンでの逢瀬では、いつも明るい笑顔を見せてくれていたダニエラ。
あの笑顔を、明るい笑い声を知っているから、ギンガはダニエラさんに愛されているのだと勘違いしてしまったのかもしれません。


それでも。
ギンガの胸に残るのは、愛し愛された記憶。

ティーンの頃に知り合って、その美しさに憧れ続けた人との思い出です。


思い出


このピンクハウスで、ダニエラと過ごしたあの日々……。

ダニエラと共に、フィオナがいました。
腹違いの妹ベロニカも。
か弱い者たちが身を寄せ合って暮らす小さな家でしたが、ギンガにとっては自分の家よりも居心地がよかったことを覚えています。

そして……。


別離


ギンガの大学進学に伴って、離れ離れになることになった二人。
あのときダニエラが見せた寂しそうな顔は、今も忘れることはできません。


お姉さま……。
もしかして、俺、お姉さまを悩ませてばかりでしたか?

俺がまだ子供で、頼りないから。
口ばっかり達者で、全然身が伴ってないから……。

そうかもしれません。
俺はまだまだ半人前で、大学は出たとはいえ、社会的には世間知らずのひよっ子ですから。
でも……。
そんな俺でも、いつまでも半人前ではありません。

いつか……。
いつかまた、お姉さまと会うことができたなら、そのときは立派な大人の男として、貴方の前に立つことを約束します。

いつか…………。
いつか、きっと……。




ギンガはポーチに出ると、そこから見える風景を眺めました。


いつか……


ぽつぽつと見える家並み。
青い空。

心を無にして、ただ眺めました。








やがて。
ギンガはタクシーを呼んで、ピンクハウスを離れました。

あきらめて帰ってしまったのでしょうか?




いいえ。
タクシーでギンガが向かった先は、「売家」の張り紙にあった不動産屋でした。
彼はまっすぐに不動産屋に向かうと、ピンクハウスの購入契約をすませました。
大学生だったギンガの貯金はそうありません。
ピンクハウスの購入で、貯金の残りもわずかですが、ギンガは気にしませんでした。


新しい家


契約を終え、晴れて自分の家となったピンクハウスに戻ったギンガ。
今日からここが我が家です。

そして。
ここで待っていれば、いつかダニエラたちに会える日がくるような気がします。
それが、はかない夢だとしても……。
今のギンガにできることはこのピンクハウスを守り、待つことだけなのです。


我が家


そう。
待つことだけ……。


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